「自殺予防週間」と「自殺対策強化月間」と対応策について

自殺予防月刊

「自殺予防週間」とは

自殺対策基本法においては、毎年9月10日から9月16日までを自殺予防週間と定めています。9月が指定されているのは、9月10日がWHOが定める世界自殺予防デーにあたるからで、その日を起点に1週間を定めました。

自殺を予防するためには、国民において自殺に関する誤解や偏見をなくし、自殺は個人の選択の問題や自由ではなく、プライベートや仕事、経済的な問題などを抱えた末に至った死であり、家族や職場、専門家などによる適切な社会的支援があれば、防げるべきものであるとの正しい知識を普及啓発していくことが望まれます。

そこで、自殺予防週間において、国や地方公共団体がWeb広告やポスターの掲示、各種セミナーやイベント、相談窓口の強化策などを通じて、啓発を図っていくことにしているのです。

2017年7月25日に閣議決定された自殺総合対策大綱では、国や地方公共団体だけでなく、関係団体や企業などの民間団体などが連携して、「いのち支える自殺対策」を実施し、啓発事業をはじめ、悩みを抱えた人が必要な支援を受けられる対策の推進が求められています。

「自殺対策強化月間」とは

自殺対策基本法では、毎年3月を「自殺対策強化月間」と定めています。国、地方公共団体、関係団体などが連携して「いのち支える自殺対策」の元手、啓発活動を推進する強化月間です。

なぜ、3月が「自殺対策強化月間」に定められたのでしょうか。実は、統計データである月別自殺者数によると、例年、自殺者が最も多い月が3月だからです。年度末、就職や転職を迎える季節、中には今年度限りでリストラされる人などもいるかもしれません。多くの人が新たな生活への転機を迎える時期が、自殺につながる時期と重なっていると考えられます。

地域や企業などが連携し合い、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現に向け、啓発活動や相談事業を強化すべき期間が「自殺対策強化月間」です。

国においては、自殺対策強化月間に合わせてFacebook広告、Twitter広告など若い人にも啓発ができるよう、インターネット広告を活用した啓発活動を実施しています。また、SNS相談ができることを周知させる動画の配信も行っています。

国や地方公共団体に加え、日本医師会や日本薬剤師会などの協賛団体、鉄道各社の企業の協力を通じて、啓発ポスターなどを全国に配布して啓発する活動も毎年欠かせません。

具体的な取り組みの例

自殺予防は企業や職場などにおいても、行うべき対策です。「自殺予防週間」と「自殺対策強化月間」における活用の具体例や日頃から行っていきたい取り組みを見ていきましょう。

中小企業における取り組みの具体例

企業の職場内で過重労働やパワハラなどによる自殺の防止はもとより、経営難などによって生じる中小企業などの経営者の自殺防止も重要です。

そこで、中小企業庁では例年「自殺予防週間」における取り組みが行われ、異変に気付いて自殺を未然防止するためのゲートキーパーに関する啓蒙など、広報ポスターの作成と掲示を行うとともに、経営安定特別相談事業や中小企業電話相談ナビダイヤルなどの相談窓口に関する情報提供を行っています。

報道機関や映画製作企業での取り組みの促進

WHOではメディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引きを発行しており、テレビ局や新聞社、ラジオ局やインターネットサイトなどのメディア企業は、自殺関連報道をする際に「やるべきこと」、「やってはいけないこと」などを守っていくことが求められます。

さらにWHOから、映画制作者と舞台・映像関係者に知ってもらいたい基礎知識として、「映画制作者と舞台・映像関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」も発行されました。

テレビ番組や映画、ドキュメンタリー、演劇などにおいて、自殺や自傷に関する企画や制作を行う場合に、実際に起きた自殺をはじめ、フィクションであっても、自殺を描写する際に留意すべきことなどがまとめられているので、手引きに配慮した企画、制作が望まれます。

一般企業における自殺予防対策

メンタルヘルスの不調などがキッカケで自殺した社員が出た場合、原則としては、自殺は労働者自身の選択として労災認定はされません。

ですが、自殺が仕事や職場との因果関係があるとして、企業の責任が認められることも増えています。基本的には、以下の条件を満たしていると、企業の賠償責任などが発生します。

企業側に明らかに過失がある場合、 企業責任としてなすべきことをしていなかった場合、使用者賠償責任を問われる場合です。

企業がなすべきことをなしていないとは、企業の安全配慮義務違反があり、従業員を安全な環境で働かせていなかったことが問題となります。

就業規則の見直しと労働時間などの遵守、定期的な健康診断とストレスチェック、産業医などの専門家との面談などの設定を行い、客観的に見ても企業が責任を果たせているかどうかの整備が求められています。

参考

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