統合失調症とは?症状や原因をわかりやすく解説

統合失調症という病気をご存知ですか?100人に1人が罹患している精神疾患で、名前は聞いたことがある方もいるかもしれません。この記事では統合失調症の基本をわかりやすく解説していきます。

統合失調症とは?

統合失調症とは、心や考えがまとまりづらくなる病気です。脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなって、幻覚や妄想などの症状が起こる精神疾患の一つです。脳の働きが乱れるため、気分や行動、人間関係などに影響が生じます。

英語では「schizophrenia」と言います。「schizo」が「分離した」、「phrenia」が「精神」という意味です。

「精神分裂病」から「統合失調症」に変わったのはなぜ?

統合失調症は、昔は「精神分裂病」と呼ばれていました。

その名の通り、精神が分裂したような症状が出るためです。

しかし、2002年8月の日本精神神経学会にて、正式に「精神分裂病」から「統合失調症」という病名に変更されています。

「精神分裂」という言葉が、非常に強烈な言葉で、患者さんやご家族に対する誤解や偏見を生む恐れがあることから、統合失調症という名前になったと言われています。

統合失調症の診断基準

DSM-5によると、統合失調症の診断基準は下記2つの条件を両方とも満たすことです。

統合失調症の診断基準

①2つ以上の特徴的症状(妄想,幻覚,まとまりのない発語,まとまりのない行動,陰性症状)が6カ月間のうちかなりの割合で存在すること(最初の3つの症状のうち,少なくとも1つが含まれていなければならない)

②社会的,職業的,もしくはセルフケアの障害を伴った前駆期または残遺期の徴候が,6カ月間にわたって明らかに存在し,そのうち1カ月間は活動期の症状が含まれている

やすまさ
やすまさ

なんだか難しい言葉ばかりですね。

もう少しわかりやすく、具体的な症状を解説していきます!

統合失調症の3つの代表的な症状

健康な状態では見られなかった陽性症状と、健康な状態ならあったものが失われる陰性症状、認知機能障害の3つに大きく分けられます。

  • 陽性症状:健康な状態では見られなかった症状(幻覚、妄想など)
  • 陰性症状:健康な状態ならあったものが失われる症状(意欲の欠如など)
  • 認知機能障害:記憶力、集中力、判断力の低下
やすまさ
やすまさ

当事者の方にヒアリングしたところ、病状に波があり、陽性症状が強く出る時期と陰性症状が強く出る時期とがあったそうです。

また、投薬治療や注射など医療的な処置をすることで、陰性症状がより強まることもあったそうです。

統合失調症の陽性症状

幻覚

幻覚とは、実際にはないものをあるように感じることです。周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が、最も出やすい陽性症状の代表例です。

実際には起きていないのに、自分の悪口や嫌な噂などが聞こえてくることもあります。

本人は現実だと思っていることが多く、「悪口を言われた」などと感じて人間関係のトラブルに発展することもあります。

やすまさ
やすまさ

統合失調症の方にヒアリングさせていただいたところ、幻覚は「リアル過ぎる夢」のような感覚とおっしゃっていました。

「これは幻覚だ」という認識はあるものの、それを取り除く手段がなく、どうしようも無い状態がループして、症状は悪化していくという感じだったそうです。

妄想

妄想とは、明らかに誤った内容を信じてしまうことで、周りがそうではないと否定しても受け入れられません。

「職場の人から嫌がらせを受けている」「誰かに監視されている」といった被害妄想をはじめ、テレビやインターネットで自分に関する悪い情報を流していると思い込む関係妄想などがあります。

幻覚と同じく、本人は妄想を現実だと思い込んでしまっているため、社会生活を送る上で問題になりやすいです。

また、統合失調症の症状としての妄想は、「誰かが傷跡を残さずに内臓を切除した」など奇異な傾向があります。

思考障害

思考障害とは、思考が混乱して考えがまとまらなくなることです。支離滅裂な会社になり、何を言っているのか他の人には理解してもらいにくくなってしまいます。

統合失調症の陰性症状

意欲の欠如(快感消失)

自主的に何かをする気力が湧かなくなったり、やると決めたことを続けることができなくなったりします。

活動に対する興味がなくなり、無目的な行動が増えてしまうこともあります。

感情純麻

感情表現が乏しくなり、他者の感情にも共感しにくくなってきます。

アイコンタクトが少なくなり、表現力が喪失します。

発語の乏しさ

ほとんど話すことがなくなり、質問への回答もそっけなくなります。

複雑な思考、抽象的な思考がしにくく、例えば、会話で比喩を使って話したりしても理解できなくなったりします。

社会的引きこもり(自閉・非社交性)

自分の世界に閉じこもってしまい、対人関係に対する関心が欠如します。

統合失調症の認知機能障害

記憶力の低下

記憶力が下がり、物事を覚えるのに時間がかかるようになります。

集中力の低下

目の前のことに集中できなくなります。

判断力の低下

物事を決めることがしにくくなってしまいます。優先順位をつけたり、計画を立てたりすることが困難になります。

統合失調症のサインに気づく方法

統合失調症の代表的な症状である幻覚や妄想、本人は「真実である」と思い込んでいるため、自分がまさか病気だとは気付くことが難しいのが問題点です。家族や職場の上司や同僚など周りの人が気づいて、専門医やカウンセラーへの相談につなぐことが、早期治療、早期回復への近道となります。

あくまで一例ですが、上記の主な症状や、以下のようなサインを参考に早期発見につなげることが大切です。

  • 不安そうにしていることや緊張していることが増える
  • 現実には何も起きていないのに、「悪口を言われた」「いじめを受けた」「命令する声が聞こえる」「監視や盗聴を受けている」などと訴えている
  • ぶつぶつと独り言を言っている
  • 一人でにやにや笑っている
  • 仕事でミスやトラブルが増えている
  • 話にまとまりがなくなる
  • 引きこもりがちになる
  • 無断欠勤が増える
  • アイコンタクトを取らなくなる

統合失調症の原因

統合失調症の発症の原因は解明されていませんが、「神経発達状の要因」と「環境ストレスの要因」の2つが相まって発症すると考えられています。

神経発達上の要因

遺伝的な要因、乳幼児の際の合併症、中枢神経系のウイルス感染、小児期の心的外傷やネグレクトなどで、神経発達に問題があることが統合失調症の発症に影響を与えていると考えられています。

環境ストレスの要因

神経発達上の問題を抱えている人が、過度なストレスを抱えると発症や再発の原因になると考えられています。

具体的なストレス要因としては、物質乱用(特にマリファナ)、失業、貧困に陥る、実家を出る、軍隊への入隊、失恋などがあると考えられています。

逆にストレスを緩和する要因としては、心理社会的な支援や、ストレスコーピングスキル、抗精神病薬などがあります。

統合失調症を抱えて生きる男性の事例:かけるんさん

僕の知人に、かけるん(水野翔)という名で活動している統合失調症の当事者の方がいます。自身が自死を考えた体験をもとに書かれた『あなたには生きていてほしい』というエッセイを公開しています。

ぜひご一読いただけると嬉しいです。

あなたには生きていてほしい
やすまさ
やすまさ

「統合失調症」を少しでも身近に感じていただけたら嬉しいです。

また、「統合失調症」という病気の特徴を理解しつつも、症状や性格は1人1人違いますので、変にカテゴライズせず相互に理解していく姿勢でいたいなと思います。

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