安倍元首相の死亡報道とウェルテル効果【他殺なら自由に報じて良いの?】

日本中で大きな衝撃が走った安倍晋三元首相の訃報を知らせるニュース。まだショックを抱えている方も多くいらっしゃるかと思います。

今回の訃報について、突然の著名人の訃報に対して個人がどう向き合うべきか?を考える機会となりました。

著名人の自殺報道がその後の自殺者数を増やしてしまうという「ウェルテル効果」との関係性と合わせて、著名人の死亡報道との向き合い方を整理していきます。

やすまさ
やすまさ

Podcast番組『パパゲーノの秘密基地』でも、今回の安倍元首相の訃報とウェルテル効果についてお話しさせていただいております。

Apple PodcastやSpotifyで配信しているため、ぜひ聴いていただけると嬉しいです。

安倍元首相の突然の事件当日、メディアはどう報じたか?

2022年7月8日(金)のお昼に「安倍元総理大臣が銃で撃たれた」と突然のニュースが。

テレビ番組やYouTubeのライブ配信、Twitterなどは、このニュースで一色に。

テレビ番組・YouTubeライブ

テレビ番組では、個人がSNSに投稿した映像などを積極的に利用して、銃撃が2発あった際の映像や、救急搬送される安倍元首相の様子がセンセーショナルに報じられていました。

また、政治家の皆さんが「これは民主主義への挑戦であり、許すことのできない蛮行だ」「政治テロだ」などと発言している様子を報じていました。

また、YouTubeライブでも各テレビ局の映像がリアルタイムで繰り返し流されていました。ライブ配信のコメントは、無事を祈るコメント、攻撃的なコメントで荒れていました。

TwitterなどのSNS

Twitterでは、一般の方がスマホで撮影した現場の映像などのツイートが拡散されて、関連キーワードがトレンド入りしていました。

YouTubeライブと同じく、無事を祈るコメント、攻撃的なコメントが溢れていました。

ABEMA変わる報道番組#アベプラ

ABEMAでは、訃報のあった当日の夜にライブ配信で警備体制についての議論がされていました。

経済新聞元政治部長の石橋文登さん、元千葉県警の田丸誠さん、テレビ朝日総理官邸担当記者の今野忍さんなど、要人警護の知見が深い専門家と、ひろゆきさんや、MCの平石さんなどお馴染みのメンバーとで、激しい議論がされていました。当日にこのスピードとクオリティで、専門家を招いて審議する点は流石だなと感じました。

安倍元首相の訃報とウェルテル効果について

自殺報道に関しては、ウェルテル効果というものが知られています。

ウェルテル効果とは?

ウェルテル効果とは、著名人の自殺報道が、その後の自殺者数を増やしてしまうという現象です。世界中で同様の事象が確認されています。

『若きウェルテルの悩み』という小説が出版された後に、主人公と同じ方法で自殺する読者が増えてしまい社会問題となったことに由来して、この名前がついています。

WHOの自殺報道ガイドライン

ウェルテル効果による後追いの自殺を増やさないようにするため、WHOは自殺報道のガイドラインを作成して公表しています。

一昔前は、自殺についてセンセーショナルな見出しをつけてメディア各社が報道合戦をしていましたが、近年はある程度WHOのガイドラインに準拠した報道をするようになってきています。

自殺報道でやってはいけないこと

・自殺の報道記事を目立つように配置しないこと
・報道を過度に繰り返さないこと
・自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと
・自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
・自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
・自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
・センセーショナルな見出しを使わないこと
・写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと

他殺ならば、自由に報じて良いのか?

WHOのガイドラインを見ると、今回の安部元首相の訃報について、メディアは真逆の報じ方をしていたことがわかると思います。

積極的にセンセーショナルな見出しをつけて、全面に何度も繰り返し、死亡に至った経緯や殺人の具体的な手段、銃撃時の現場の映像などを報じていました。

自殺ではなく、他殺であれば、著名人の訃報でもこのような報道をすることは良いことなのでしょうか?

とにかく速く事実を解明し他社より1秒でも速く報じて視聴率やPV数を稼ごうとするメディアの特性によって、視聴者のメンタルヘルスに悪影響を与えている側面もあるのではと疑問に思いました。

突然の訃報に個人はどう向き合うべきか?

最後に、突然の訃報と出会ったときに、個人がどう振る舞うべきかについて簡単にまとめます。

①不用意に情報をシェアしない

まずは不用意にSNSの投稿をシェアするのを控えましょう。衝動的に、いいねをクリックしたり、シェアしたり、したくなるかと思いますが、緊急時こそ、落ち着いて深呼吸して、メディアと向き合います。

②意識的にスマホやテレビから距離をとる

突然の訃報はメディアで繰り返し報じられます。何度も何度も暗いニュースを見ていると、気持ちが引っ張られてしまうものです。

特に影響を受けやすい方は、「今日はSNSを見ない」と決めてしまうのがおすすめです。

③根拠のない憶測や主張を表明しない

突然のニュースがあると、根拠のない憶測で、自分の主張を声高にコメントする人で溢れます。

今回も、以下のような主張が相次いでましたね。

  • 民主主義への挑戦とも言える蛮行だ!
  • 警備体制が悪い!税金もらってるんだからちゃんと仕事しろ!
  • あの不祥事が原因だ!
  • あの宗教団体と関係があるのでは?

突然の出来事で、憤りを感じたり、驚いたり、感情的になってしまうため、攻撃的なコメントをしたくなってしまうのだと思います。極力、根拠のない憶測でものを言うのは控えたほうが良いです。

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