株式会社Mentallyが運営するピアサポートに特化したこころのオンライン相談アプリ「mentally」。
β版でのトライアルを経て、2022年7月に正式リリースされました。
日本のメンタルヘルスビジネスとして注目されている「mentally」を徹底解説して行きます!
mentallyは、カウンセリングの障壁を下げて、誰もが気軽にメンタルケアにアクセスできる未来に寄与する点で、最も期待しているメンタルヘルス関連事業の1つです。
メンタルヘルスに興味のある方は、ぜひmentallyについて知っていただけると嬉しいです!
(ちなみに回し者でもなんでもなくて、ただのユーザーです)
mentally(メンタリー)とは?
mentallyとは、ピアサポートに特化したこころのオンライン相談アプリです。
2022年7月5日に正式リリースされました。
ひとことで言うと、「メンタルヘルスに特化したYahoo!知恵袋」のようなオープンなQAサイトに、個別相談を有料でできる機能を加えたWebサービスです。
mentallyには3つの意味がある
mentally(メンタリー)という言葉は、以下の3つの意味合いで使われています。
今回はWEBサービスの「mentally」について分析していきます。
- WEBサービスの「mentally」:サービスの名前。悩みを打ち明けられるこころのオンライン相談アプリ。
- 会社名の「Mentally」:会社の名前。株式会社Mentally。Mは大文字。
- WEBメディアの「mentally」:株式会社Mentallyが運営するオウンドメディアの名前。
株式会社Mentallyは、WEBサービスの「mentally」をリリースする前に、WEBメディア事業を先に立ち上げています。そのWEBメディアの名前も同じく「mentally」です。
また、会社名はMが大文字で「株式会社Mentally」となっています。
ピアサポートとは何か?
mentallyは「ピアサポート」に特化した相談サービスです。
ピアサポートとは、似たような立場同士の人の支え合いのこと。
イギリスのメンタルヘルス財団は「精神疾患または学習障害の生きた経験を持つ人々が互いに与えることができる支援とサポート」と定義しています。
メンタルヘルスの世界では、「専門家からの支援」ではなく「生きた経験をもつ当事者同士の相互支援」として使われます。
mentallyの場合、メンタル不調の予備軍や患者さん同士で、こころの悩みの相談ができます。
なお、悩みに回答したり、個別相談する人のことをmentallyでは「メンター」と呼んでいます。
精神疾患または学習障害の生きた経験を持つ人々が互いに与えることができる支援とサポート
(出所:イギリスのメンタルヘルス財団)
mentallyとよくあるオンラインカウンセリングサービスの違い
mentallyは「ピアサポート」に特化している点が通常のオンラインカウンセリングサービスとは異なります。
例えば、オンラインカウンセリングの「cotree(コトリー)」では、臨床心理士、公認心理師など心理系の資格を持った専門家がカウンセリングを提供しています。
これに対して、mentallyは有資格者ではなく、「悩みを経験した当事者」が相互支援する仕組みとなっています。
mentallyの利用規約とサービスの法的位置付け
mentallyの利用規約で、サービス内容は以下のように規定されています。
あくまでカウンセリングではなくピアサポートなので、原則はユーザーの自己責任で、医療行為はしないことが明示されています。
第3条(本サービスの内容等)
本サービスは、ユーザーが不特定又は特定のメンターに対して相談を行うことを支援するサービスです。ユーザー等は、本サービス上での相談の投稿、相談への回答、個別相談等を、それぞれ自己の責任において行うものとします。
ユーザーは、本サービス又はメンターの行為が、心身の不調の快癒その他の成果を保証するものではないことをあらかじめ承諾するものとします。
メンターは、医行為その他所要の資格が必要な行為等を当該資格を有することなく行わないものとします。
ユーザー等は、本サービス上での一般投稿、個別相談又はこれらへの回答等については、弊社が責任を負うものではないこと、また、本サービスを利用してなされた一切の行為に起因する結果について自ら責任を負うことを、あらかじめ承諾します。ただし、第17条第3項の場合にはこの限りではありません。
mentally利用規約より引用
mentallyの利用料金
mentallyの利用料金は2段階にわかれています。
悩みをテキストで相談してメンターから回答をもらう機能は無料で利用できます。
その後、メンターと電話やビデオ通話などで個別相談を希望する場合は「30分で1980円」になります。
mentallyのメンターはどんな人?
mentallyのメンターは、ピアサポートのコンセプトの通り、医者や公認心理師など資格を持ったカウンセラーではなく、精神疾患、メンタルヘルス不調を経験した当事者の方です。
統合失調症、うつ病、適応障害、双極性障害、摂食障害など、さまざまな精神疾患を経験してきたメンターが、約70名在籍しています。(2022年7月時点)
mentallyの監修医
mentallyの監修医は産業医・精神科医としてご活躍されている堤先生です。現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長を務めています。
ちなみに、堤先生には、以前こちらの記事を書いていただいたことがあります。臨床以外の領域でも精力的に活躍されている先生です。
「うつ病っぽいけど、病院にいってくれない」どう声をかける?【産業医が解説】mentallyのビジネスモデル
mentallyのビジネスモデルは、悩みを持つ個人とメンターを結ぶリボンモデルです。
双方のパイプラインを太らせて、取引量を増やすことがこのビジネスを大きくするためには必要となります。
mentallyのマネタイズ方法
mentallyのキャッシュポイントは、有料での個別相談の料金の20%を利用手数料として取るモデルです。
リボンモデルを大きくしていった先で、有料での個別相談の取引量をどれだけ増やせるかがビジネスの成功の鍵となります。
メンターは、弊社に対し、メンター報酬のうち20%を利用手数料として支払うものとします。
また、弊社は、前項に基づき代理受領したメンター報酬から利用手数料を相殺した金額をメンターに支払うことができるものとします。
mentally 利用規約より引用
悩みを持つ個人への提供価値
mentallyの「悩みを持つ個人」への提供価値は主に以下の3つです。
- 【無料】似たような境遇をもった人に悩みを相談しテキストで回答をもらうことができる
- 【無料】似たような境遇をもった人や情報に出会うことができる
- 【有料】似たような境遇をもった人に音声通話、ビデオ通話などで30分「1980円」で個別相談できる
メンターへの提供価値
mentallyの「悩みを乗り越えて似たような境遇の人の力になりたいメンター」への提供価値は主に以下の2つです。
- 【無料】自分が相談にのることができそうな「悩みを持つ個人(≒見込み顧客)」を探すことができる
- 【有料】1件30分1980円から有料の個別相談を実施して「80%」を報酬として受け取る仕事ができる
mentally(メンタリー)の使い方
それではmentallyの使い方を簡単に解説していきます。
あくまで2022年7月時点のものですので、これからどんどん改善したり、仕様変更されていくだろうとは思いますのでご了承ください。
mentallyのログイン方法
mentallyは、ログイン方法に少し癖があります。そのため戸惑う人もいるかと思います。
というのもmentallyは「パスワード」を設定しない仕様になっているためです。
一般的なWEBサービスは、「メールアドレス」と「パスワード」を設定して、2回目以降はログイン情報としてこの2つを入力してログインするかと思いますが、mentallyには「パスワード」という概念がありません。
そのため、毎回ログインのたびに「メールアドレス」を入力し、メールアドレス宛に届いたURLをクリックするとmentallyにログインできるという仕様になっています。
まずはログインURLから、メールアドレスを入力。利用規約に同意して、「ログインリンクを発行する」をクリックします。
ログイン画面には下記の注意書きがあります。
次回以降も同じ手順でリンクを発行する必要があります。
mentallyログイン画面の注意書きより引用
プロフィールの設定方法
ログインしたら、最初にプロフィールを設定します。
プロフィールは後から編集できないので、匿名で相談したい方は本名を入れないように注意してください。
これで初期設定は完了です。
掲示板にて、こころの悩みを投稿して相談することができます。
mentallyのメニュー
mentallyには右上に3つのメニュー画面があります。
- ①個別相談(有料)
- ②プロフィール閲覧
- ③ログアウト
①個別相談
1番左のボタンをクリックすると、メンターへの個別相談のページが開きます。
2022年7月時点ではまだ個別相談機能は実装されていないようです。
②プロフィール閲覧
プロフィールのページには、自分の名前、紹介文、過去に投稿した悩みが表示されます。
③ログアウト
1番右のボタンをクリックすると、ログアウトができます。
新規相談の方法
画面右下にあるボタンをクリックすると、新規の相談を投稿することができます。
ポップアップで2つの選択肢がでてくるので、左側の無料で相談をクリック。
その後、相談内容を入力できます。50文字以内のタイトルと、200文字以内の相談内容を記入します。
実際に相談してみたところ、翌日にはメンターさんから1件の回答を得ることができました。
mentallyからの悩みのメルマガ通知
mentallyを利用すると、定期的に届いた悩みの相談をまとめて、メルマガで通知してくれます。
自分と近しい境遇の方の悩みを知るきっかけになったり、他の人の悩みから勉強になることも多そうです。
mentally(メンタリー)を実際に使ってみた感想
実際にmentallyを使ってみた率直な感想としては、「ありがたい存在」ということです。
最近1番うまくいっていない研究関連の悩みについて、相談させていただきました。自殺関連の雲をつかむような研究テーマなので、なかなか前にも進まずもどかしい気持ちを抱えています。
メンターの方から1日後には以下のような回答をいただくことができました。具体的解決策につながるわけではないですが、悩みを言語化して整理し、向き合う言葉を投げかけてくれるのは助かります。
そして、「メンタル不調気味だなと心配な人に対して、おすすめしやすい!」と感じました。
「メンタルクリニックに行ったら?」「オンラインカウンセリングを受けてみたら?」ということは、日本だとかなり心理的ハードルが高くて人には勧めにくいです。
「mentallyを使ってみたら?」と言うのは、ずっと言いやすいかなと思います。
mentallyの事業課題
あくまでユーザーとして使ってみて感じたことですが、mentallyの今後の事業課題は以下の2点になりそうだなと思いました。
①個別相談機能の開発
1つ目が個別相談機能の開発です。どんなUIUXになるのか楽しみです。
②1980円の有料相談にどれだけコンバージョンするのか?
2つ目が有料相談にどれだけコンバージョンするか。無料相談で満足してしまって、1980円のお金を払って有料でメンターに相談する人がなかなか現れない、と言うことは往々に起こりうることです。
オンラインカウンセリングの5000円〜1万円の相場と比較すると、低価格で有料相談へのコンバージョンはしやすそうです。一方で、ピアサポートであるため相談相手は有資格者ではありません。専門家ではない方に有料で相談するか。
mentallyの今後の展望はどうなる?
ここまでは基本的に今ある情報をかき集めて簡単に整理しただけですが、ここからは未来の不確かな情報を予測して考えていきます。
予測というと烏滸がましいので、どちらかというとmentallyへの「期待」であり「願い」ですね。
mentallyがメンタルヘルス産業に一石を投じる素晴らしいビジネスとして成長していくことを心より願っています。
mentallyの今後の開発ロードマップ
mentallyは開発ロードマップを下記に公開しています。
株式会社Mentallyの資本政策・資金調達
株式会社Mentallyの資本政策については、正直分からないことがほとんどです。
2022年7月時点の時価総額・株主構成
株式会社Mentallyの想定時価総額や従業員数、株主構成は不明です。
2022年7月時点で資金調達に関連するプレスリリース等を出してはいないため、まだ外部からの株式での資金調達はしていないと思われます。おそらく入っていたとしても、創業チームやエンジェル投資家の個人株主が数名と推察されます。
2022年4月以降は株式での資金調達をする可能性が高そう?
代表の西村さんのTwitterによると、2022年4月以降はいわゆる「スタートアップ型」の外部資本を入れた事業展開に挑戦すると2020年8月時点で述べています。
逆にいうと、それまでは家族を優先し、融資も株式での資金調達もしないと決めて会社経営をされていたそうです。周囲に流されずに、自分の生き方を貫いている姿勢は本当にかっこいいなと思います。
mentallyのビジネスモデルは、取引量を爆発的に増やしていくことで収益が青天井に期待できるビジネスです。
逆にいうと、開発費、広告宣伝費を先行投資してユーザー数とメンター数を爆発的に増やさない限り、プラットフォームとしての価値は上がりにくく、ビジネスモデルも成立しない可能性が高いです。
現状営業キャッシュフローがどの程度あるのか次第でもありますが、外部資本を入れて事業展開する可能性が高いだろうと思います。
NTTドコモ・ベンチャーズのインキュベーション「/HuB(スラッシュハブ)」に採択
mentallyは、2022年1月にNTTドコモ・ベンチャーズのインキュベーションプログラム「/HuB(スラッシュハブ)」の採択企業に選ばれています。
ちなみに、過去の「/HuB(スラッシュハブ)」採択企業には「めんへら先輩」を提供する株式会社メンヘラテクノロジーも入っています。
mentallyの事業リスクや懸念事項
①自殺念慮の高い方など重症者や緊急の対応が必要な方も対象とするのか?
メンタルヘルス系のビジネス全般に言えることですが、軽い悩みではなく、重症度・緊急度の高い悩みを抱えている方をどの程度サービスの対象者に入れるかが論点になるかと思います。
実際に、既にmentallyには「死にたい」「自殺」などのキーワードを含む悩みも投稿されています。
例えば、「自殺」「死にたい」など自殺念慮が想定されるキーワードを含む相談に対しては、自動的に「あなたのいばしょ」や「いのちの電話」のような自殺対策の相談窓口を案内するような配慮はすると良いかもしれません。
②LINEヘルスケアの炎上事件に似た問題が起こらないか?
「相談者」と「支援者」と繋ぐ健康相談系のサービスで起きうるのが、「支援者側のクオリティーコントロールが難しい」と言う問題です。過去にLINEヘルスケアで明らかにひどい回答をして炎上した事例があります。そのようなことが起こらない仕組みを整える必要がありそうです。
mentallyやピアサポートの拡充に期待したい
ピアサポートは、これまで「善意ある当事者のボランティア」に依存していた側面が強いかと思います。
それがmentallyでは、有料相談に繋げることで、収益にも繋がる仕組みになっています。
mentallyによって、ピアサポートが持続性、実効性高く社会に広まっていくことを心から期待しています。
※本記事では、公開されているWEBサイトや、mentallyにログインすれば誰もが見ることのできるページのスクリーンショットをわかりやすく解説するために利用させていただいております。万が一、不適切な掲載や削除をご希望される場合は個別にご連絡いただけますと幸いです。