【生成AIと障害者支援】書籍出版のクラファン挑戦中!

自殺対策・自殺予防に取り組むNPO法人と一般社団法人11選

「自殺対策」や「自殺予防」と聞いて、ぱっと思いつく団体はありますか?ちなみに数ヶ月前の筆者は、かろうじて「いのちの電話」を聞いたことがあるくらいでした。

今回は、自殺対策や自殺予防に取り組む特定非営利活動法人 (以下、NPO法人) や一般社団法人を合計11団体紹介するので、これを機に知っていただけると幸いです。

自殺対策・自殺予防の本質は「生きることの支援」にある

まずはじめに、みなさんは現在の日本の自殺者数をご存知でしょうか。2021年の自殺者数 (確定値) は、前年より74人少ない21,007人でした。統計が始まった1978年以来、1年の自殺者数が最も多かったのは2003年の34,427人ですのでそれと比較すると減少していますが、いまだ多いのが現状です。

さて、ここで少し日本の自殺対策について振り返ってみましょう。

  • 2006年 自殺対策基本法の施行
  • 2007年 自殺総合対策大綱の策定
  • 2008年 『自殺実態白書2008』の発表
  • 2017年 「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」の閣議決定

このように国を挙げて自殺対策が行われたことで、自殺は「個人の問題」ではなく、「社会の問題」だという認識が広がるとともに、2019年まで自殺者数は減少し続けてきました。

しかし、先ほども述べたように「ひとりの尊い命が失われた」という事実の積み重ねであることに変わりありません。だからこそ、これからも社会の「生きることの阻害要因 (自殺のリスク要因)」を減らし、「生きることの促進要因 (自殺に対する保護要因)」を増やすという「自殺対策」や「自殺予防」が必要とされています。

また、2017年の自殺総合対策大綱にはこんな文章があります。

自殺対策の本質が「生きることの支援」にあることを改めて確認し、「いのち支える自殺対策」という理念を前面に打ち出して、「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」を目指す。

自殺総合対策大綱2017

では早速、「生きることの支援」を行っているNPO法人と一般社団法人をみていきましょう。

自殺実態白書に記載があるNPO法人

まずは、自殺実態白書に記載されているNPO法人を4つ紹介します。

【1】NPO法人自殺対策支援センターライフリンク (2004年10月~) 

様々な分野の専門家及び全国の地域拠点と連携して「生きることの包括的な支援」を行っています。SNSやチャットによる自殺防止の相談を受け、必要に応じて電話や対面での支援および居場所活動等へのつなぎ支援も行っています。

それ以外にも「自死遺族のつながり」シンポジウムなどを主催し、自殺実態白書2008作成において中心的な役割を担ってきました。

【2】NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア (2012年1月27日~) 

低価格のカウンセリング (オンライン・対面・電話) や、無料の電話悩み相談やSNS (LINE・Twitter・Facebook) 相談を実施してきました。また、心の学びの場としてセミナーやイベントを不定期開催しています。

またライフリンクと同様に、相談内容から必要に応じて電話や対面での相談をしたり、公的機関や様々な分野のNPO団体へつなぎ支援を行っています。

【3】NPO法人BONDプロジェクト (2009年~) 

10代20代の生きづらさを抱える女の子のための女性による支援をしているのが特徴的です。10代20代の女の子に対してはメール相談・面談・パトロールなどを行うだけではなく、講演・イベント・事例研修会などの開催や登壇を通して、女の子を取り巻く環境の改善にも努めています。

さらに、毎週月・水・木・金・土曜日は、10時から22時 (21時30分まで受付)でLINE相談も受け付けています。

【4】NPO法人チャイルドライン支援センター (1999年1月14日~)

フリーダイヤル事業 (電話相談)・オンラインチャット相談を通して、子どもたちと直接関わり、いじめや自殺などを予防するアウトリーチプログラムの開発や実施に取り組んでいます。電話相談・オンラインチャット相談ともに18歳までの子ども限定で、午後4時から午後9時に利用できます (オンラインチャットの実施日はカレンダー参照)。

また、子どもの「声」から気づいたことを社会に発信することで、子どもの育つ環境が整うことを目指しています。

厚労省の自殺相談SNS窓口一覧に掲載されているNPO法人

【5】NPO法人あなたのいばしょ

NPO法人あなたのいばしょは、厚労省の自殺相談SNS窓口一覧に掲載されており、24時間365日、年齢や性別を問わず誰でも無料・匿名で利用できるチャット相談窓口です。最短5秒で国内外にいる「いばしょカウンセラー」が相談に応じるとともに、緊急性が高い事案 (自殺行為・DV・虐待など) には、警察や児童相談所などの関係機関と連携し対応にあたってくれます。

2020年3月の開設から2021年6月までに88,974件の相談を受けてきました。

また、「いばしょマガジン」というメンタルヘルスのTIPSや、相談分析結果などを紹介するWEBマガジンも発行しています。

厚労省の自殺相談電話窓口一覧に掲載されている一般社団法人

厚労省の自殺相談電話窓口一覧に掲載されている一般社団法人は2つあります。

【6】よりそいホットライン (一般社団法人 社会的包摂サポートセンター) (2011年10月11日~)

よいそいホットライン (発足当時は寄り添いホットライン) は、東日本大震災の被災地支援がきっかけで生まれました。被災された方が「心のケア」を必要としていることから、最初は岩手・宮城・福島の被災3県を対象に回線は1本、週2日、1日12時間、12月末日までの約3ヶ月限定でスタートしました。そして、翌2012年3月から対象を全国に拡大し、30回線を24時間つなぐ「よりそいホットライン」が始まったのです。

2020年からは『被災された方のためのもやもやルーム』という、被災された方同士でテーマに合わせてチャットでおしゃべりできる非公開で登録制のサービスも提供しています。

【7】いのちの電話 (一般社団法人 日本いのちの電話連盟) (1971年10月1日~)

いのちの電話は、フリーダイヤル相談・インターネット相談・自死遺族支援を行っています。1971年10月1日に日本で初めてボランティア相談員による電話相談が東京で開始され、1977年8月に日本いのちの電話連盟が結成されました。そして、フリーダイヤル相談は毎日午後4時〜午後9時 、毎月10日は午前8時から翌11日の午前8時まで実施しています。
また、いのちの電話の起源や運営体制などの詳細については以下の記事で詳しく解説しています。

いのちの電話 「いのちの電話」とは?匿名電話相談の実態や運営体制、相談員になる方法を解説

その他の自殺対策に取り組むNPO法人

最後に、ここまでで紹介されていないNPO法人を4つみていきます。

【8】NPO法人OVA (2014年~; 代表の伊藤次郎さんの活動は2013年度~)

OVAを代表する取り組みが「夜回り2.0」というウェブ検索連動型広告を用いたオンライン上のゲートキーパー活動です。具体的には、自殺関連語の検索をした人に対して相談を受ける旨の広告を出し、メールやSkypeをはじめとする通話アプリから相談を受けて相談者それぞれの問題を明確化することにより、現物の医療・福祉等の援助資源につなげています。

それ以外にも、支援を届ける仕組みの普及させるための「アウトリーチ事業」や、政策への働きかけを行う「ソーシャルアクション事業」も行っています。

【9】認定NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター

国際ビフレンダーズ」に加盟する団体です。

【10】NPO法人大阪自殺防止センター

こちらも「国際ビフレンダーズ」に加盟する団体です。大阪自殺防止センターは1978年に設立され、1983年に国際ビフレンダーズに加盟しました。この団体が設立されたのは、「関西いのちの電話」で活動していた西原由記子さんが「サマリタンズ」の活動を知ったことがきっかけです。これまでに電話相談や自死遺族へのサポートなどを行っています。

そして東京自殺防止センターは1998年に西原夫妻が上京し、活動拠点を増やしより多くの苦しむ人たちに応えるために設立されました。その頃は年間自殺者数が初めて3万人を超え、自殺のニュースが相次いでいたときです。電話相談や自死遺族支援に加えて、ゲートキーパー研修や人間関係回復の場である「コーヒーハウス」の開設も行いました。

【11】NPO法人Light Ring. (2010年1月1日~ ; 法人化は2012年2月20日)

メンタルヘルスの社会課題を解決するために「こころの病」の一次予防を行っており、その中でも「若者支え手支援事業」として、相談の場やコミュニティなどを提供しています。また、「若者自殺対策事業」として、ゲートキーパー養成講座・学生向けメンタルヘルス講座・教員向けメンタルヘルス研修なども行っています。

おわりに

自殺対策・自殺予防に取り組むNPO・一般社団法人を11団体ご紹介してきました。

今回紹介した団体以外にも自殺対策や自殺予防に取り組む団体はありますが、今後さらにその取り組みが拡大し、少しずつでも自ら命を断つ選択をする方が減ることを願っています。

最後になりますが、もし今、生きているのが辛いと感じている方は、どうか1人で抱え込まずに周りの人を頼ってみてください。家族や友人ではない「誰か」に話を聞いてもらいたいと思ったときは窓口もあります。

それでは、皆さまが今日という日を健やかに過ごせますように。

<参考資料>

厚生労働省自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安全企画課「令和3年中における自殺の状況」

・厚生労働省「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~ 」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000172329.pdf

・厚生労働省「電話相談」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html

・ヤフーニュース「『生きづらさ』抱えた人たちの”最後の砦”に――『よりそいホットライン』の寄り添い方」

https://news.yahoo.co.jp/feature/1520/