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 診療報酬化された「ACTION-J」のケースマネジメントプログラムとは?

action-j

診療報酬になった自殺予防の「ACTION-J」について、そして「ACTION-J」がどのような点で注目されているのかなどについて説明していきます。

自殺企図の再発防止策「ACTION-J」とは?

ACTION-Jとは、厚生労働省の「自殺対策のための戦略研究」として2006~2011年度まで、精神科と救命救急センターが連携する全国17医療施設で、自殺企図で搬送された914名の未遂者を対象に行われた「自殺企図の再発防止に対する複合的ケースマネジメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究」の通称です。

ACTION-Jが実施される前年の2005年、厚労省は日本人の健康問題において特に解決優先度が高いと考えられる事項について、科学的根拠に基づく対策を施策化して解決するために大規模な研究事業を立ち上げました。研究事業初年度は、「糖尿病」と「自殺問題」が研究課題として掲げられ、 この一環でACTION-Jの実施に至りました。

「自殺対策のための戦略研究」全体像
(出所:厚生労働省「自殺対策のための戦略研究」全体像)
自殺対策のための戦略研究

・NOCOMIT-J:複合的自殺対策プログラムの自殺機と予防効果に関する地域介入研究

・ACTION-J:自殺機との再発防止に対する複合的ケースマネジメントの効果(多施設共同による無作為化比較研究)

「自殺未遂」は最も強い自殺の危険因子です。そのため自殺未遂者の自殺再企図防止は、自殺対策を進める上でとても重要ですが、国際的な有効な対策が実証されていませんでした。

そんな中で、自殺対策のための戦略研究である「ACTION-J」 が、世界的に初めて科学的な根拠をもってその戦略を提示しました。

本研究は米国および日本で臨床試験登録を実施し、世界に類例をみない大規模研究として国際的に注目されています。

ACTION-Jでの支援プログラムと成果

ACTION-Jでは、精神科と救命救急センターが連携する全国17医療施設で、自殺企図で搬送された914名の未遂者を対象に1年半の追跡調査が行われました。

914名の自殺未遂患者が登録され、460名が試験介入群に、454名が強化された通常介入群に無作為割り付け (施設・性別・年齢・自殺未遂歴で調整) されました。また研究参加者は、男性400名、女性514名、平均年齢は約42歳、自殺未遂歴がある人は450名でした。

ケースマネジメント介入プログラムは、試験介入群と通常介入群のどちらにも実施されました。

ACTION-Jのケースマネジメント介入プログラム

1.入院中・退院後の定期的な面接
2.治療状況と心理社会的問題に関する情報収集
3.精神科治療受療・継続の勧奨
4.精神科医とプライマリ・ケア医の連携コーディネート
5.精神科地長中断者の精神科再受療の勧奨
6.個別化に配慮した社会資源の活用、コーディネート
7.心理教育と情報提供
8.専用WEB供覧

このプログラムは、通常介入群に対しては入院中に、試験介入群には無作為割り付けから1週間に1・2・3・6・12・ 18ヶ月後まで継続的に実施されました。

結果として、試験介入群では自殺再企図の発生割合が低く、中でも「女性」「40 歳未満」「過去の自殺企図の既往を持つ対象者」の群で、有意に低くなりました。対照群 (通常介入群) にかなり強化された介入を実施しましたが、試験介入群ではそれを大きく上回る自殺再企図抑止効果が認められました。

このように、ACTION ‐J のプログラムは「現実の臨床現場での実施」「既存の医療専門職者による実施」「極めて少なかった対象者の脱落」といった点などから、実施可能性と実効性が極めて高いことが示されたのです。

最後に、このACTION-Jの「専門的・学際的観点からの評価」を第81回科学技術部会資料より引用します。

・本研究において、ケース・マネジメント介入の自殺未遂の再企図予防効果が確認されたことから、救急医療施設を起点とした自殺未遂者支援のあり方を具体的に検討することが可能となった。

・ 本研究により、ケース・マネジメント介入の再企図予防効果は、性別・世代によって異なることが明らかになり、さらなる科学的根拠に基づく自殺未遂者対策の必要性が示された。

・ 研究参加施設に蓄積されたノウハウの検討により、ケース・マネジメントを実施するための導入条件や実施上の課題等の分析が可能となり、今後、自殺防止対策を検討する上での重要な資料となり得る。

2016年にACTION-Jは診療報酬化

ACTION-Jの成果活用の必要性はすでに政府の自殺総合対策大綱で言及されています。

そして、ACTION‒J のプログラムを着実に実施することのできる人材を養成するための教育プログラムの開発が行われ、さらに2015年度には、自殺未遂者再企図防止のために全国9施設でACTION‒J モデルを医療現場で実践し普及するための事業が開始されました。

その後、ACTION-Jのケースマネジメントプログラムは診療報酬の改定を審議する中医協に答申されて、2016 年に「救急患者精神科継続支援料」という名前で診療報酬化されました。

今後は、ACTION-Jモデルが普及して臨床現場でより広く履行されることで、自殺未遂者の自殺再企図、ひいては自殺既遂の減少が期待されています。

診療報酬とは?

診療報酬とは、診療行為の対価として医療機関に支払われる料金のことです。診療報酬の1〜3割は患者が支払い、残りは患者が加入している医療保険者が支払っています。これはすべて医師の収入になるわけではなく、医療スタッフの人件費や、医薬品・医療材料の購入費、施設の維持・管理費用などに使われます。

診療報酬では、ひとつひとつの医療行為ごとに細かく点数が決められています。皆さんも医療機関でもらう領収書の「○○点」という表記に見覚えがあるのではないでしょうか?それが診療報酬の点数です。ちなみに、領収書と一緒にもらう診療明細書は、その名の通り領収書よりも診療内容や検査、処方箋薬剤などが細かく記載されています。

そして、診療報酬は「1点=10円」として計算されており、この「1点=10円」という金額は全国共通のものです。例えば、初診料が288点であれば2880円になります。

また、診療報酬は医療の進歩や世の中の経済状況とかけ離れないよう通常2年に1回改定されます。

2008年の改定で自殺未遂者に対する救急・精神科医療の評価が盛り込まれ、2012年の改定で精神科リエゾンチームに対する評価が新設されています。

おわりに

さて今回は、診療報酬になった自殺予防の「ACTION-J」について説明してきましたがいかがでしたでしょうか。この記事が少しでもみなさまの理解の一助となれば幸いです。

ACTION-Jの初年度からもう15年以上が経ち、当時と比較すると年間の自殺者数は減少しています。

その背景には社会情勢や他にも多くの要因があると思いますが、ACTION-Jモデルはその1つとなっているのではないでしょうか。今後さらにACTION-Jモデルが普及し履行されることで、生きることに絶望する人が少しでも減ることを願っています。

最後になりますが、もし今、生きているのが辛いと感じている方は、どうか1人で抱え込まずに周りの人を頼ってみてください。家族や友人ではない「誰か」に話を聞いてもらいたいと思ったときは無料で利用できる相談窓口もあります。

無料で利用できる相談窓口

それでは、皆さまが今日という日を健やかに過ごせますように。

参考文献